ソフトウェア開発組織において、テクノロジーロードマップを作る機会があるでしょう。
テクノロジーロードマップとは、戦略的かつ長期的な計画を明示化し、そのプロセスをサポートするソリューションです。 ロードマップを作ることで、技術リソースや組織の目的、環境の変化との間の"動的な連携"を可視化できます。
テクノロジーロードマップとは
テクノロジーロードマップを実際に作ると、奥が深いことに気付くでしょう。 最初に考えさせられることが、テクノロジーロードマップは「テクノロジーの話だけではない」ということです。
技術戦略はビジネス戦略から独立して立案されるべきではなく、ビジネス計画が考慮されるべきです。 マーケットがあり、プロダクトがあり、そしてテクノロジーがあるのです。
ロードマップでは、マーケットとプロダクトとの連携を、時間軸の上に表現します。
引用: Technology roadmapping—A planning framework for evolution and revolution
ロードマップそのものより、ロードマップを作るプロセスのほうが重要
マーケット、プロダクト、テクノロジーのレイヤーが相互に連携したロードマップを作るためには、いくつものコミュニケーションが必要になります。
ロードマップを作ることは、組織間の議論を促進し、マーケット・プロダクト・テクノロジーの間のギャップを埋めることになります。 そのプロセスは、①マーケットを分析し、②プロダクト仕様を抽出し、③技術を抽出し、④ロードマップを作成するというように、それぞれの知識を共有しなければなりません。
引用: Technology roadmapping—A planning framework for evolution and revolution
このプロセスにおいて、マーケットの「プル」とテクノロジーの「プッシュ」のバランスをとるために、知識の共有が促進され、組織を跨いだコラボレーションにつながります。
引用: Technology roadmapping—A planning framework for evolution and revolution
マーケット・プロダクト・テクノロジーの間には、必ずコンフリクトが発生します。 コンフリクトを解消するために、対話を通して各レイヤーがお互いを理解することで、ロードマップが作られていきます。
そして、ロードマップを作るまでに発生するコミュニケーションを通して共通認識が生まれます。 このプロセスこそが、ロードマップがもたらす大きな価値になります。
トップダウンとボトムアップ
テクノロジーロードマップをトップダウンで作っただけでは、技術組織の理解は少ないため、ロードマップの実現は難しくなります。 一方、ボトムアップで作ると、特定の組織に閉じられたロードマップとなり、ダイナミックな戦略は生まれません。 そのため、トップダウンとボトムアップの両方が必要になります。
トップダウンである程度の指針を立てて、ボトムアップの意見を吸い上げて、そのコンフリクトを解消します。 この際に、マーケットやプロダクトロードマップとの整合性が崩れないようにしなければなりません。
トップとボトムを行き来することで、ロードマップの質が向上します。
ケイパビリティ
2015 NASA Technology Roadmaps では、個々のテクノロジーとともに、そのケイパビリティも定義されています。
ロードマップを実現するために、どのようなケイパビリティが必要なのかを分析することで、技術(あるいは、組織)戦略の具体化をできるようになります。
まとめ
テクノロジーロードマップは、それ単体では価値があまりありません。
マーケット・プロダクト・テクノロジーのロードマップと連動しながら、トップとボトムを行き来して作成することに意味があります。 そして、ケイパビリティを分析することで、組織戦略が見えてきます。
これらが連動することで、テクノロジーロードマップの価値が発揮されるようになります。
参考文献
- Technology roadmap - Wikipedia
- https://www.semanticscholar.org/paper/Technology-roadmapping%E2%80%94A-planning-framework-for-and-Phaal-Farrukh/533d39a32b51704bb99dc3f95095b0d90fd18653
- Technology roadmapping—A planning framework for evolution and revolution - ScienceDirect
- Model-based technology roadmapping: potential and challenges ahead
- Roadmapping as process — cambridge roadmapping