2025年2月27日、Engineering Manager Conference Japan 2025(EMConf JP 2025)を開催しました。 ご参加いただいた皆様、ご支援いただいた皆様、ありがとうございました!
私は EMConf JP 2025 の実行委員として、このカンファレンスの企画立案から運営に携わりました。 この記事では、それらをふりかえりながら、どのような活動をしていたのかまとめたいと思います。
EMConf JP 2025 の始まり
EMConf JP 2025 は、国内でも最大規模の Engineering Manager 向けのカンファレンスになりました。
企画の着想が2023年12月、足掛け2年で開催に至りました。 当時は、Engineering Manager のコミュニティがいくつもあり、それぞれのコミュニティがそれぞれのイベントを開催していたころです。 これらをまとめた大規模なカンファレンスを開催したいというのが、EMConf JP 2025 の企画の発端かなと思います(あらたまさんのポストで企画を知りました)。
#emconf 開催の機運
— あらたま|LayerX Inc. (@ar_tama) 2023年12月15日
そして、2024年4月に190さん、941さん、あらたまさん、パウリさん、ゆのんさん、私の6名で実行委員会を結成し、カンファレンス立ち上げプロジェクトが本格的にスタートしました!
EMConf JP 2025 のステートメントである「生み出す熱が、より大きく、より広がっていく」というのが、企画段階から始まっていたのですね。
主なタイムライン
カンファレンスの開催までの主なタイムラインは以下の通りです。 約10ヵ月のプロジェクトになりました。
- 立ち上げフェーズ: 2024年4月
- 実行委員会の結成
- キックオフ
- 会場手配
- 準備フェーズ: 2024年5月 - 2024年11月
- ティザーサイトの公開
- 協賛企業募集
- 登壇者募集
- スタッフ募集
- 実行フェーズ: 2024年12月 - 2025年2月
- チケット販売
- 各種制作物の作成
- 会場準備
- イベント開催
タイムラインでふりかえる
1. 立ち上げフェーズ
プロジェクト始動!
実行委員会のキックオフにて、まずカンファレンスの目的やテーマ、開催日や参加者数を決めました。 委員会結成の裏側やキックオフの中身について、パウリさんのEMConf JP の楽しみ方 / How to enjoy EMConf JP - Speaker Deckに詳しく記載されています。
開催日と参加者数が決まると、プロジェクトマネジメントの要領で準備を進められます。 まずは、開催日を起点として、バックキャスティングで主要なマイルストーンを設定していきました。 会場手配の期限、ティザーサイトの公開、協賛企業募集、スタッフ募集、プロポーザル募集などの重要な日程を決めていきます。
予算計画はカンファレンスの規模から逆算して策定しました。 予算を決めることで、会場の要件や必要な協賛企業数も具体化し、それらをもとにイベント全体の企画を進めることができました。
会場手配
会場候補の検討は、真っ先に行いました。 予算・参加者人数・開催日など、会場に依存するものが多いため、会場が決まらないとカンファレンスの詳細を決められないためです。
実行委員会の知見をもとに会場候補を挙げて、実際に訪問して下見をし、以下の点を確認しました。
- 会場レイアウト: セッションの会場位置やサイズ、ブースの配置、懇親会の会場位置
- 会場備品: 会場から提供される備品、ゴミの処理方法
- 開催までのフロー: 資材搬入〜保管の流れ、懇親会の転換の流れ、搬出の流れ
下見後に見積もりをいただき、予算や企画に適しているかなどを検討し、会場を最終決定しました。
2. 準備フェーズ
告知
告知は、8月を目指しました。 必要になる SNS アカウントやティザーサイトの準備を進めます。
サイトのデザインは、nagayama さんが担当してくれました。 nagayama さんは、制作物も含めてすべてのデザインを担当してくれて、どれもすばらしいものでした。 この場を借りて、nagayama さんに感謝を申し上げたいと思います。
EMConf JP のロゴ誕生秘話 🙊
— EMConf JP オフィシャル (@emconf_jp) 2024年8月29日
このロゴは、「e」と「m」の筆記体が点と点を繋ぐ線になっています。これは、個と個を繋ぐイベントであることをイメージしており、参加いただいた方々が繋がりを得られる場にしたいという思いが込められているのです 💡 pic.twitter.com/KitylE24lq
(このロゴをいただいたとき、カンファレンスの成功を確信しました…!)
デザインが決まり、ドメインの取得やサイト構築などを行い、8月28日に、ティザーサイトを公開しました!
協賛企業募集
ティザーサイトの公開とともに、協賛企業の募集を開始しました。 告知フェーズのキャッシュフローを回すために、協賛企業の募集も優先して進めることが大事なポイントでした。
募集案内資料は、 941 さんがとても丁寧に書いてくれて、とてもわかりやすいものになりました。
協賛募集期間の1ヵ月間、ドキドキしながら協賛応募状況を見守っていました。 そして、ありがたいことに多くの企業様にご応募をいただきました。
こちら協賛応募をしていただいた企業数を集計したところ、全体の枠数が18に対して応募企業数は36と実に2倍で、また枠によっては3倍の申し込みがございました🙄
— EMConf JP オフィシャル (@emconf_jp) 2024年10月3日
改めてありがとうございます!
抽選結果は予定どおり10月4日(金)に連絡させていただきますので、今しばらくお待ちください🙋#emconf_jp https://t.co/bUrJLfC7yl
抽選を経て最終的に、協賛企業様は23社になり、多大なご支援をいただきました。
登壇者募集
基調講演には、広木さんと岩瀬さんを迎えることができました。 マネジメントの第一線で活躍されているお二人に、登壇をご快諾いただき本当にうれしく思っています。
一般公募は、10月15日から開始しました。 これまでの反響から、ある程度の応募数を見込んでいたのですが、それを大きく超える数の応募をいただきました…!
x.com\こちら締め切りました!/
— EMConf JP オフィシャル (@emconf_jp) 2024年11月16日
投稿された有効トーク数はなんと... 233件でした🎉
トーク時間20分枠の倍率は27倍、40分枠の倍率が11倍‼️
本当にありがとうございます😭
投稿していただいたトーク内容は1つ1つ丁寧に見ていきます🙋#emconf_jp https://t.co/k4AuITLBOs
この後、プロポーザルを1つずつ丁寧に確認して、採択をしていきました。 どのプロポーザルも、とてもすばらしいもので、採択はとても悩ましかったです。
また、プロポーザルの管理には、 fortee を採用しました。 fortee は、そのほかにもカンファレンスの運営に役立つツールを提供しており、タイムテーブルの作成にも利用しています。
当日スタッフ募集
カンファレンスの当日運営は、実行委員会だけでは到底足りないため、当日スタッフを募集しました。
こちらもありがたいことに、非常に多くの反響をいただき、倍率が2倍以上になってしまいました。 あらためて、当日スタッフにご応募いただいた皆様、本当にありがとうございました。
企画検討
企画検討では、実行委員会のみんながとてもおもしろいアイデアを出していて、いつも打ち合わせを楽しんでいました。 主な企画には、「そろチェキ!」「アンカンファレンス」「スタンプラリー」「Ask the Speaker」「ノベルティグッズ」などがありました。
中でも特徴的なのは、ネームカードの「em」という文字が割印になっており、10人に一人同じ色の人と会えるという仕掛です。
「そろチェキ!」(割印の色がそろったらチェキを撮ろうという企画)により、参加者の交流にもつながったのではないかと思います。
ほかにも、参加者が交流するきっかけとなる、プレーリーカードも好評でした。 ネームホルダーに入れることで、会場で気軽にプロフィール交換をしていただけたのではないかと思います。
3. 実行フェーズ
2024年12月に入り、各種準備が佳境に入ってきました。 このころから、私の本業は実行委員会になってきた気がします。
チケット発売
12月9日に、いよいよチケットの発売が始まりました。 このころには、カンファレンスの告知はほぼ終わり、協賛企業様のロゴもサイトに掲載されていました。
チケットには、参加チケットのほか、懇親会付き/プレーリーカード付きのオプションも用意しました。
いざ、チケットが販売されると即完売してしまい、反響が大きいことに驚きました。 「買えなかった」という声も多かったので、会場キャパや予算調整などをしながら、参加枠を少し増やし第2回目の販売も実施しました。
\🎟️完売御礼🎟️/
— EMConf JP オフィシャル (@emconf_jp) 2024年12月23日
EMConf JP 2025 のチケット販売は、予定枚数の販売を終了しました🙇 大変な反響をいただき、スタッフ一同感謝です🥹 開催まであと2ヶ月、楽しみにしていてください🙌
チケット販売後、複数枚購入された方や誤購入された方など、キャンセルのお問い合わせが多くありました。 Peatix にてチケットの譲渡を不可にしていたため、このような問い合わせが多かったようです。 プレーリーカードの制作があったという背景から、チケット譲渡を不可にしていましたが、この方針はもう少し緩くしてもよかったかもしれません。
各種制作物の作成・備品準備
チケットの発売の後、各種制作物の作成も進めました。 主な制作物は、次のようなものがありました。
- ネームカード(裏面は会場図と企画案内)
- スタンプラリーカード(裏面はタイムテーブル)
- オリジナルデザイン T シャツ
- オリジナルデザインペットボトル(協賛企業ロゴ入り)
- オリジナルデザインタオル
- オリジナルデザインプレーリーカード
- 記念撮影用パネル/チェキボード
- 大看板/バックパネル
- 懇親会入場用リストバンド
制作の流れは、 nagayama さんからいただいたデザインをもとに、各種注文サイトや業者に入稿していくことになります。 注文書のやりとりなども多く発生し、これらを期日必達で進めなければならないので、なかなかプレッシャーを感じました。
併せて、当日使用する備品の手配も進めます。 ネームホルダー・各種ペン・テープなどの大量の備品を手配したり、会場に設置する簡易ゴミ箱を購入したり、イベントの2週間前くらいは私の部屋は備品で溢れ返っていました。 しかし、あれを買ってはこれ足りないということが多く、何度も備品を追加購入しており、配送業者の方には申し訳なかったです。
マニュアル準備
当日の運営をスムーズにするため、業務マニュアルを作成し、当日スタッフのみんなへ送付しました。 構成は以下のようなものです。
- 運営の一日の流れ
- 受け付けマニュアル
- アンカンファレンス・コミュニケーションスペースマニュアル
- ブースマニュアル
- 会場案内マニュアル
- 控え室マニュアル
- 撮影マニュアル
- 大会場・中会場マニュアル
- 遊撃マニュアル
- 転換(懇親会)マニュアル
- イベントコンテンツの紹介
- 備品一覧
文字数で2万文字ほど。ぼちぼちボリュームがあります。 マニュアル通りに運営することは難しいですが、ないよりはよっぽどマシでした。
また、業務を文字化したことで、当日運営のウォークスルーにもなり、カンファレンスの準備にも非常に役立ちました。 さらに、当日スタッフのみんなからフィードバックをいただけたことで、漏れていることや抜けていることが見つかり、本当に助けられました。
会場準備
企画に合わせて、会場のレイアウトなどの詳細を詰めていきました。
思いの外、企画などの調整が多かったことで、会場とのやりとりも多くなっていました。 たとえば、以下のような調整をしていました。
- セッション会場の座席増席
- 企画に伴う会場レイアウトの変更
- 懇親会レイアウトの調整と転換の流れ
- 利用する会場部屋の追加
- 会場利用時間の延長
- 会場提供備品の追加
- 産業廃棄物の処理業者の手配
各種制作物や備品、スポンサーブースの資材などは、イベント前日に搬入しました。 その際、荷解きや備品の整理、トランシーバーの設定、制作物の確認も行いました。
少ない時間でバタバタと準備していたので、前日準備は余裕を持って行ったほうが安心できそうです。
イベント当日
さて、いよいよイベント当日! あとはもうやるだけです!
私はずっとバタバタしていましたが、それでもみんなでうまく運営できていて、本当にありがたかったです。 大きなトラブルもなく、無事にイベントを終えることができたことに、安堵しています。
運営における『!』なポイント
イベントのふりかえりをしてみて、「やっておいてよかった!」「これは大事だった!」「改善が必要だ!」など、覚えておきたい『!』なポイントがありました。 せっかくですので、それらをまとめておきます。
サイト更新を楽に!
ティザーサイトは、後のホームページになることを見越して、インフォメーション等の更新を容易にしたいと考えていました。 そこで、 Notion を CMS として活用できる astro-notion-blog を採用しました。
ホスティングに、 CloudFlare Pages を採用することで、デプロイも容易になり、ほぼ無料で運用できることもポイントです。 加えて、さらに簡単にデプロイできるよう、 Discord bot を作成してデプロイを自動化しました。 Discord の bot の実装は、dskst/discord-bot-cloudflare に公開しています。
当たり前ですが、ホームページの更新を楽にすることで、積極的に更新できるようになりました。
ドキュメント大事!
登壇者、協賛企業、当日スタッフなど、さまざまな人たちと非同期でやりとりをすることになります。 Discord でのやりとりのほか、それぞれの人が最新の情報を得られるドキュメントを重宝しました。
協賛企業向けの資料、登壇者向けのご案内、当日スタッフ向けのマニュアルといったドキュメントを作成し、すべての情報をここに集約しました。 また、これらのドキュメントを NotebookLM に食べさせることで、簡易的な FAQ ツールとしても活用できました。
業務を整理し備品数を見積もる!
備品の数の見積もりは、スタッフマニュアルなどを作成しながら行うと効率的でした。 どの業務にどの備品が必要か、その数はどれくらい必要ということがわかり、精度の高い見積もりができました。 加えて、備品の数は少し余分に用意しておくと、当日のさまざまなシチュエーションに対応できるので安心です。
一点想定外だったのは、電源タップの数です。 会場から借りられるものだと数が少なかったため、当日購入することになってしまいました。 会場レイアウトで電源周りの詰めが甘かったことを痛感しています。
バックオフィス業務もしっかりと!
地味にたいへんだったのは、バックオフィス業務です。 協賛企業23社分の請求書を作成したり、関わる業者との注文書や支払い処理など、思った以上にやることがありました。
メールのやりとりが多いのに加えて、FAX でのやりとりが必要な場合もあり、連絡先と連絡チャネルが多いのもまたたいへんでした。 片手間でやるのではなく、しっかりと体制を作ることが大事だなと思いました。
お金の管理は大事!
カンファレンスは、協賛金で運営されているため、お金の管理は非常に重要です。
事前に予算計画を作成して、支出を管理しながら進めていましたが、不足の事態はままあります。 赤字にならず、かつ利益が出ないよう、やりくりがなかなか難しかったです。
また、シンプルなスプレッドシートで予算管理していたので、もっと効率化する余地もありそうです。
開催1ヵ月前はリソースを空けておく!
これ、本当に大事です。 1ヵ月前は、バタバタです。
この期間、各種準備や調整・入稿業務が佳境を迎えるので、丸っとリソースを確保しておくと安心です。
スタッフの士気を高める!
当日スタッフをはじめとする運営の士気を高めることも忘れてはいけません。 お弁当を用意するなど労働環境を整えることも大事ですが、スタッフに対するホスピタリティも大事だなと思いました。
これについて、あらたまさんが書いたスタッフ心得の一文は、非常に印象に残っています。
そして大事な心得がもう一つ!「皆さん自身が当日楽しみきる」ということです!懇親会はできるだけ皆さんにも参加いただけるようにするつもりです。スタッフ同士の交流、参加者・スピーカーとの交流をぜひ楽しんでください!
190さんは、朝8時から気合いを入れてくれました。 (190さんのように熱いことを言えるようになりたい)
このほか、当日スタッフの懇親の場を用意したり、スタッフ打ち上げで交流したりしました。 あらためて、当日スタッフのみんなに感謝を申し上げたいと思います。
経験者のアドバイスを聞く!
実行委員会には、カンファレンス開催のプロ 941 さんがいたこと、一日にカンファレンスを梯子するほどカンファレンス通いをするパウリさんがいたことで、さまざまな知見をいただくことができました。
941さんのブログ記事は、知見に溢れているので、ぜひ読んでみてください。
カンファレンスが終わっても気を抜かない!
カンファレンスが終わったあとにも、やることはいくつかあります。 これがいくつか抜けていたので、気を抜かないようにしなければと反省しています。
たとえば、以下に挙げるようなものがあります。
- 来場者・登壇者への御礼
- 協賛企業・関係各所への御礼
- 来場者アンケートの実施
- 協賛企業アンケートの実施
- 登壇資料の収集・まとめ
- カンファレンスの写真の整理・公開
- イベントレポートの作成・共有
- 各種支払い処理・決算
- 実行委員会のふりかえり
今現在もまだやることが残っているので、それらをしっかりと行っていきたいです。
EMConf JP 2025 を終えて
長々と書いてしまいましたが、 EMConf JP 2025 は、すばらしいカンファレンスになったのではないかと思います。 会場の雰囲気やハッシュタグを眺めていると、参加者の皆さんが楽しんでいることがわかり、それが一番うれしかったです。
カンファレンスの「価値を実現する」ために「なんとかする」ことが、運営のお仕事だなと感じています。 あらためて、当日スタッフの皆様、協賛企業の皆様、各種パートナー企業の皆様、そして実行委員会のみんな。ありがとうございました!